外来化学療法

外来化学療法室
化学療法とは、注射や内服薬によって全身へ抗がん剤を行き渡らせ、広がる可能性のあるがん細胞や、すでに他の場所へ転移したがん細胞を治療する全身療法です。
近年では、支持療法(副作用を和らげるための薬)の進歩や医療情勢の変化、患者さんの社会生活重視などから化学療法の場は入院から外来へと移行しています。
当院では、2008年4月より外来化学療法室を設置し、自宅での生活を継続しながら抗がん剤治療が受けられるようになりました。
新規抗がん剤の開発に伴うレジメン※(抗がん剤投与に関する薬剤の種類や量、期間、手順など時系列で示した治療計画)の早期導入や新規分子標的薬(がん細胞の浸潤・増殖・転移にかかわる分子をターゲットにして働きを阻害)にも積極的に取り組んでいます。
主な対象疾患
胃がん、大腸がん、乳がん、血液がん、膵胆管がん、肺がん
治療実績

2015年 化学療法の実績

2016年 化学療法の実績

2016年 疾患別化学療法の割合
化学療法を受ける患者さんは年々増加傾向にあります。ここ数年の患者数は、2015年度総計463人、2016年度総計482人が治療を受けています。
診療科別では外科が全体の8割近くを占めており、術前、術後の化学療法や進行抑制、症状緩和を目的とする化学療法を行っています。また、大学病院や近隣の病院からも術後補助療法や進行抑制の目的で化学療法の依頼を受けています。
疾患別実施数では、2016年度は大腸がん、血液がん(悪性リンパ腫や多発性骨髄腫など)、乳がん、胃がん、肺がん、膵胆管がんの順になっています。
当院では大腸がん21種類、胃がん11種類、乳がん13種類、膵胆管がん2種類、肺がん2種類、血液がん6種類の55種類のレジメンを登録しています。
単剤から作用機序の異なる抗がん剤を組み合わせた多剤併用もあり治療効果を高める反面、副作用には注意が必要です。
気になる副作用について
使用薬剤には多くの副作用があります。
主なものに過敏症、骨髄抑制(造血作用の障害)、感染、倦怠感、脱毛・皮膚障害、心障害、肝障害、腎障害、肺障害、味覚障害、浮腫末梢神経・自律神経・脳神経障害などがありますが、患者さんによって、または使用する薬剤や量によって現れ方が異なり、治療する全ての患者さんに出現するわけではありません。
設備や説明等
外来化学療法室には電動ベッド2床、リクライニングチェア1台を設置しています。治療中はテレビ鑑賞や読書、趣味や食事など自由に過ごしていただけるよう快適な環境作りに努めています。
外来化学療法では、副作用などの管理は患者さん、ご家族によるセルフケアが重要です。治療を受け入れ継続できるように開始前から十分な説明と患者さんのニーズにあわせて変更・修正し、不安や疑問に対処しながら指導しています。
外来化学療法に係わる医師、看護師、薬剤師、各医療職は、各専門性をいかしたチーム医療を行い、より安全で快適な時を過ごすことができるよう患者さんやご家族と一緒に考え支えていきます。
外来化学療法の流れ
外来化学療法は使用するレジメンにより投与スケジュールが異なります。
1. 事前に予約された外来日に受診します
2.検温、一般状態のチェック、体重測定、必要な検査を受けます
血管が細く穿刺に時間を要することが予測される場合は、採血時に血管確保する場合があります
3.診察後主治医が治療可能と判断した場合、外来化学療法室へ移動します
4.抗がん剤の調整は、医師からの連絡後薬剤師が行います
5.医師、または看護師が点滴部位を穿刺、血管外への漏れがないことを確認し点滴を始めます
6.レジメンに基づいて調製された抗がん剤を順番に決められた時間で投与します
7.終了後問題がなければ抜針し、止血を確認した後帰宅可能です
8.自宅では、副作用の予防・早期発見・対処を患者さん自身が行います。観察記録を付けることをすすめています
安全に配慮
当院では標準化学療法(臨床試験によって作られた科学的根拠に基づいた、その時点での最も効果的で安全と考えられる治療法)を用いて、あらかじめ使用頻度の高いレジメンを登録し、チェック体制をかけやすい電子カルテで一元管理しています。
登録以外の新規レジメンは、院内に設置された「レジメン審査委員会」を開催し承認されたものが投与可能となります。
レジメンは、オーダから選択し投与量が自動的に管理されますので、過誤や過量投与の防止に役立っています。
治療中は、担当看護師が常に患者様の状態について確認し、異常の早期発見に努めています。緊急の事態が生じた場合、迅速かつ適切な対応を行います。
治療後何らかの症状に変化があれば、夜間、休日でも日当直医師や看護師が対応しています。気兼ねなくご相談下さい。
B型肝炎対策
B型慢性肝炎患者さんやHBV既往感染患者さん(B型肝炎ウイルスに過去に感染し、治った状態で、ほとんどの人が、既往感染者であることを知らない)が免疫療法・化学療法により免疫抑制状態になると、今まで抑えられていたB型肝炎ウイルスが増え、肝炎を発症する場合があります。この場合、重症の肝炎を発症する頻度が高く注意が必要です。当院では化学療法を行う全ての患者さまにスクリーニング検査を行いB型肝炎対策を行っています。
経済的な問題について
高額療養費制度(公的医療保険における制度の一つで、一定額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度)など自己負担額を軽減する制度があります。これは、加入している保険や所得などによって自己負担額や手続き方法が異なります。
また、他にも年齢や病状によって使用できるサービスや制度がありますので、市役所、各健康保険窓口や、当院の医事課、医療連携相談室にお尋ね下さい。
不明な点があればお尋ねください
入院治療から外来治療へ移行している現在、外来という限られた時間の中で情報共有しながら治療が継続できるよう支援していきたいと思います
※レジメンとは(抗がん剤投与に関する薬剤の種類や量、期間、手順など時系列で示した治療計画)